graveng

2.4 力とエネルギー

互いに逆向きの同じ大きさの力が存在するとき、そこには平衡が保たれ、仕事はなされず、このときエネルギーの変化(消費)もないというのが、現代物理学の考え方となっています。このような現象の例は、同じ力で引き合う綱引き、重力場の中でおもりを手で支えること、机に置かれたおもりなど多くの現象が存在します。

おもりを手で持って支えれば、その人の腕の筋肉は疲労し、何もしていないときより多くのエネルギーが必要であるかのように思えます。物理学者の解釈によれば、このときエネルギーが必要と思われるのは、筋肉の生物学的な構造によるものであるとされ、筋肉の種類によっては支えることにエネルギーを消費しないものもあると説明されます。

このような物理学の世界に生物学を持ち込むような説明で片付けてよいものでしょうか。まずは、力に関する現象を考察し、問題点を明らかすることにしましょう。

机の上に置かれた物体に糸などをつけて引っ張るとき、一般に物体と机の間には摩擦(抵抗)があって、ある程度の力を加えなければ物体を動かすことはできません。この摩擦の種類には、様々な形態があって、空気の抵抗などの小さいものから、鉄骨の破壊強度などの大きな力が必要なものもあります。

抵抗が小さいとき、小さな力を加えれば物体を動かすことができますが、抵抗が大きいとき、大きな力を加えなければ物体を動かすことができません。物体が動きだす瞬間とそれ以前では、観測者にとっては劇的な変化が観測されることになります。物理学者の見解によれば、仕事がゼロからゼロではなくなったことになるからです。

現代の物理学では、物体が動きだす前になされた仕事はゼロであると結論されています。仕事ということの別表現がエネルギーであると解釈すれば、加えられたエネルギーもゼロであると結論しなければなりません。加えられたエネルギーがゼロであるとすれば、何も力を加えていないときと同じであるということになります。物体を押しているときと押していないときは、明らかに物理的状態は同じではありません。しかしながら、その数理的表現は同じであるということになります。このようなことは、現象を数理的に正しく表現できていないと考えられます。

実際、力を加えられた物体とそうでない物体が同じでないことは明らかでしょう。鉄の棒に力を加えれば、ある程度の力により棒は曲がりだしますが、その変化は突然起こるのではなく、小さい力ではほとんど観測されない程度に、棒は歪み、発熱することになるでしょう。棒が歪んだり、発熱したとすれば、誰もがエネルギーが必要であったと言うことでしょう。それなのに現代物理学においてさえ、棒が曲がりだすまではエネルギーは必要ないと主張されているのです。

加えられる効果と観測される現象が簡単な比例関係にないということは、物理学においては、それほどめずらしいことではありません。-20℃の氷を10℃加熱してもほとんど変化は見られませんが、更に10℃加熱すると劇的な変化が観測されます。このような現象は、鉄の棒を曲げる現象と類似しています。これらの現象はまったく異なる現象のように感じられますが、氷が融けることと棒が曲がりだすことは、棒が部分的に融けたから曲がりだすと考えれば、本質的に同じ原因によるものと考えることができます。どちらの場合でも、劇的な変化が観測される前に行ったことは何等仕事をしていないように見えますが、実際には必要なことであったことがわかります。

このことを証明する方法は幾つかありますが、ここでは最も簡単で、誰もが納得せざるを得ない実験的方法を使うことにしましょう。

「2.1物体を押すこと」で述べた物体を棒で押す実験を応用します。滑らかな抵抗がほとんどない床の上に質量mの立方体の物体を置き、この物体を棒で押すとします。

物体を押した直後の物体の速度はVですから、加えられた力Fに要したエネルギーは、運動のエネルギーmVに比例する量であったことがわかります。床の抵抗はわずかに存在し、物体は10m滑って止まったとします。

次に床と物体との抵抗を増やし、同じ力Fで同じ物体を押すとします。抵抗が増えたためにこの物体は5m滑って止まったとします。このとき、棒で物体を押すに要したエネルギーは、10m滑ったときと同じ量であったことは明らかです。物体が滑り出した後の効果が、物体を押すという前の効果に影響を与えることはありえません。未来の事象が過去に影響を与えることを肯定するのはSFだけの世界にしておきましょう。

このようにして徐々に抵抗を増やしていけば、物体の滑走距離は反比例して、徐々に減っていくことになり、やがては、巨視的に見て、棒で物体を押しても物体は静止したままとなります。このとき「力を加えても物体は動かないのであるから、力を加えることにエネルギーは必要ない」という結論を得るのが物理学なのでしょうか。

SFの話をするつもりはありません。われわれが得た結論は、

「力を加えることで物体が動こうと動くまいとエネルギーは必要である」

ということです。このことは地球上に静止している物体にも、重力によって常にエネルギーが加えられているということを意味しています。もし、エネルギーが加えられていないのなら、マッチ棒を組み合わせて、摩天楼を作ることだってできるでしょう。

重力によるこのエネルギー源の正体が何なのかは誰にもわかりません。われわれにわかっていることは、重力を発生するために他の何かが変換されたという現象を観測していないことと、重力の効果は反射、減衰することなく、宇宙の彼方まで放出され続けているということです。

重力を発生するために他の何かが変換されたという現象を観測していないということを事実として受け入れれば、重力のエネルギーは無尽蔵なエネルギー源でフリーエネルギーであると考えられるのです。

しかしながら、このエネルギーを効率的に取り出す方法は、まだ、一般的には知られていません。地球の重力場のような場は、保存力場とよばれ、エネルギーが取り出せないような場であると考えられています。保存力場からエネルギーを取り出すことは可能なのでしょうか。次には、保存力場について考えましょう。


2.5 保存力場

サブメニューに戻る

ホームページに戻る


Updated 29/Mar/1997 redsky@graveng.jp